・村田香谷画賛 倣沈石田先生 雪景図 紙本・
ここでは、私の身近にある絵画を使って、水墨画の鑑賞をいたします。
一流の名画と呼ばれるものは全くありませんが、それでも十分楽しめます。
鑑賞の仕方の参考にでもしていただければ良いと思っています。

村田香谷画賛 倣(ならう)沈石田先生 雪景図 紙本
表具は花唐草緞子地の丸表装で筋回しがあり、一文字も唐草です。
軸先は紫檀材です。
作者紹介
村田香谷(むらた・こうこく)
南画家で、福岡県生れ。名は叔、別号に蘭雪・適圃等。
画を貫名海屋、徐雨亭・鉄翁祖門・木下逸雲に、詩を梁川星巌に学ぶ。
山水に素晴らしい作品が多く、詩書も優れた作品を多く残し、
煎茶家としても知られて、煎茶道具の箱書きも多く残している。
晩年は大阪に住した。大正元年(1912)歿、83才。

賛は自賛で、五言絶句と落款です。
詩は
幽人佚楹坐
釣者撃魚来
好萬千山雪
一尊獨自開
落款は
石田翁作雪景曲尽厳冬凛
冽冽熊偶学其法
香谷田叔 印 印
落款に「偶学其法」とありますが、
これは「どこかでたまたま石田の画に出会い、それを写し学んだ」ということになります。
石田について少し紹介します。
沈石田(1427年〜1509年)明代中期の文人画家で
江蘇省に生まれ名は周、字は啓南、別号に白石翁などがあります。
名家の出ではありますが、代々仕官はしませんでした。
詩は蘇軾・陸游に学び、書は黄庭堅、画は董源・巨然・黄公望・呉鎮の山水画を学び、
その後元末四大家を基盤とした文人画の方向を確立しました。
そして弟子の文徴明と共に呉派文人画の中心となり、その後の文人画の流れを方向付けました。
日本でも沈石田の名は早くから知られ、多くの画家たちが彼の画を学ぼうと写しています。

細部を見てみます。
本物の石田の作品とは程遠い筆致です。石田の筆はゆったりと、誠実に描きます。
それに引き換え、香谷は非常に早い速度で筆を運び、石の皴などもかなり荒く描かれています。
点苔を石の重なり合うところに、まばらに打つところや、木の枝先の描き方などは、
少し雰囲気が似ているようなところもあります。
香谷が写したのは、このような詳細な部分ではなく、全体から感じる寂寞感と共に、
それを好んで楽しもうとすらしている、画中の隠士なのでしょう。

木の向こうの道を見てください。
突然木の後ろで消えています。実に適当な画です。
なのに、こんな寒い雪景色の中で窓を開け広げて雪景を眺めている人物と
その室内は詳細です。机の上の本は秩の中に3冊あります。
香谷が描きたかった部分、を感じ取れます。
松煙墨の青みを帯びた墨色はこの山水画には、効果的です。
どんよりとした空や、水面を薄墨で塗り尽くしているので、より画面全体が重くなり、
それに反して雪の白さを浮き立てます。これは雪景を描く時の常套手段です。
まだまだ見るところは多くありますが、限りがあるのでこのくらいにしておきます。
ここでは作品の良し悪しを問うことはしません。真贋も大きな問題としては取り上げません。
ただ画をどのように鑑賞すれば良いかを解説していきたいと思っています。
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