文人趣味的書架その一
「詩経」

これは三年ほど前に私が描いた、つゆ時の梅の木の絵です。
葉陰にはまだ青い実が数個隠れています。
この画の題は「☆有梅」です。
注(☆に入る漢字は「手へんに票(ひょう)」です)
「詩経」を御存じの方は、実が七つではないか、いや三つだ、と探し始めます。

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家蔵の『詩経』は江戸末から明治初頃の、漢詩テキストの様な普及版です。
「詩経」とは、中国最古の詩歌集で、紀元前11世紀〜6世紀ごろに謡われていた詩の中から
305編を選んで編集されたもので、あの孔子が編者とも言われています。
詳細につきましては、ここでは省略します。
その「詩経」の中の国風の召南の項に「☆有梅」があります。
注(☆に入る漢字は「手へんに票(ひょう)」です)

読み下し文を掲載します。
落ちるのは梅の実、(木の上に残った)実は七つ。
私を欲しい男たちよ。さあこの良い時のあいだに。
落ちるのは梅の実、(木の上に残った)実は三つ。
私を欲しい男たちよ。さあ今のうちに。
落ちるのは梅の実、もう籠で拾いとるほど。
私を欲しい男たちよ。さあ私がこういっている間に。
(岩波書店 中国詩人選集 詩経国風上 吉川幸次郎注より)
如何でしょう。ドッキリです。
もう最初の画を素直には見れません。
時間の経過を梅の実の数が減っていくことで表しています。
ほかに違った解釈もあります。
「☆有梅」とは梅の実を若い男をめがけて投げ、当たれば結ばれる。
という意味に捉えると、読み方も変わります。
注(☆に入る漢字は「手へんに票(ひょう)」です)
七つあった実が少なくなっていきます。すべて的を外したのか、
最後には籠の底を尽きます。後は話し合いだと。
ただし現代の感覚のまま読まないで下さい。
万葉集にだって、けっこうロマンチックな詩があります。
西洋絵画と違い、画のモチーフをそのまま鑑賞するだけでは、
真意を理解出来ないものが多くあります。
写生では無く写意と呼ばれる由縁です。
本を多く読むことで、より画を深く理解でき、感動も大きくなります。
文人画を鑑賞するにはとても大切なことです。
この画では、上に勢い良く伸びる今年の枝と、
実が生っている昨年の枝を描き分けています。
若々しく勢いのある青年と、実を実らせる成熟した枝。
この「☆有梅」の詩を私なりに表現してみました。
注(☆に入る漢字は「手へんに票(ひょう)」です)
『詩経』は過去に多く出版されていますので、手に入ると思います。
そして殆んどの詩は短いものです。
少しでも時間があれば何処からでも気軽に読むことが出来ます。
お勧めの1冊です。
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