線香
(その1)

・玉蘭香・

黄玉の鼎型の小さな香炉に線香を立てる

家にいるときは毎日のように線香をつける。

もちろん香木を燻るとより良いのであるが、なかなか面倒なので、つい線香になる。

いろいろな所で買い貯めた線香は、いったい何種類あるのだろう。

しかし気が付けば、限られた数種だけがすぐに底をつく。

画を描くとき。

手紙を書くとき。

疲れて家に帰ってきたとき。

雨が数日続き、1日中霧に包まれている時。

お気に入りの茶器を携えて桜の木の下でのんびり過ごすとき。

大切な客を迎える時に玄関に。そして座敷の床の間に。かおりを使い分ける。

かおりほど曖昧なものはない。昨日まで好きだった香が、今日から一生嫌いになることさえある。

ふと感じたかおりから何十年も前の記憶が甦ることさえある。

だから線香を選ぶ時、かならず少し考える。

1本の線香が燃え尽きるまでの僅かな時間を心地よく過ごすために。



愛用の線香のひとつ。京都鳩居堂製「玉蘭香」

久しぶりの休日の昼下がり。読書には白檀の軽やかな香が心地よい。

BACK