墨
画や書を画く者にとって、墨は欠かせない大切なものです。
しかし、その割にはこだわる人は少なく、ましてや描く主題に応じて使い分ける人は殆んどいません。
なぜなら墨の色は大まかに言えばすべて黒色だからでしょう。
黒色だからといって、墨汁は問題外です。念の為。
あれは墨とは呼べず、墨汁ではなく、黒汁なのです。
墨は硯に磨られ、微粉末になります。
この微粉末の一粒一粒の大きさが異なることで、滲みに変化が起るのです。
もちろん紙との相性にもよります。
墨には大きく分けて、油煙墨と松煙墨とがあります。
油の煤か松の煤かの違いです。(もっと詳細に分類できるのだが)
この煤を、魚の膠か、動物性の膠で練り、型に入れて、その後乾かしたものが墨です。
練る時にも、人の足や手で練るのと、臼で杵を搗いて練る方法とがあり、
このような違いは、墨の主産地である中国と日本の違いでも起ります。
なのに出来上がった墨は全て黒色です。
(朱やその他の彩墨は例外として)
ここからが大切です。
書の場合、多くの人が墨を磨ったまま筆に付け紙に置きます。
(中には磨った墨を何ヶ月もかけて腐らせ、その後水で薄めて書く方がおられるそうですが、これは例外として。)
本当はそれでも墨色の違いはあるのですが、経験の浅い者には判りづらいものです。
しかし画を描く場合、殆んどは水で濃度を加減して紙に置きます。
其の時に初めて明確に墨の違いを発見するのです。
長々と語ってしまいましたが、現在ではここから話さなければならないほど、墨とは疎遠になっているのです。
これらの墨は私が作品を描く時に使っている墨の一部です。作品によって使い分けています。
そして、これらの中には、ただ摩り下ろすだけの墨ではなく、手に取り愛玩できる墨もあります。
ここに「文房清玩」の世界が始まるのです。
次回より、より具体的なお話をいたします。
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