(その3)

・端渓蒼灰色石・
〜楕円硯〜



この硯は端渓の山坑の旧石で
俗に「灰蒼色(かいそうしょく)」と呼ばれている材です。
この硯も9cmしかない小ぶりの物です。
どうも掌に乗る大きさの物が愛着を持ちやすい大きさなのかもしれません。
清代の硯であることは確かですが、それ以上は判りません。

画像の中に「芥子園画伝」が一緒に写っていることに気が付かれましたか?
実はこの硯にはしっかりとした細字の隷書体の側款があります。
「波☆因文起 塵埃為翳侵 憑君更研究 何※價千金 李笠翁題」
{ ☆に入る漢字は、さんずいに貞と書いて(とう)と読みます。}
{ ※に入る漢字は、商の字の中が古の字で(てき)と読みます。}

・・・波が動き、それによって文が起こり、塵やほこりによって影を侵す。
君は更に研究に励むと、やがて値千金を手に入れる事ができるでしょう・・・
この様な意味だと思います。

要するに、この硯を使って一生懸命勉強をすると、出世しますよ。ということです。
そしてこの款の最後に名があります。
「李笠翁題」と。



そうです。『芥子園画伝』を出版した李漁です。
もちろん本人の硯かどうかは、今となっては判断できません。

しかしこの硯を机上の右に置き、左には『芥子園画伝』。
400年近く前の文人の机上の姿です。
この硯に寄せる想いは、より大きくなるばかりです。

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