「山居の茶」
今年も、庭の茶の木から煎茶を作りました。
山居には茶の木が1本だけあります。
品種は「やぶきた」。
今年は霜に遭うこともなく、新芽が伸びはじめました。
一芯二葉。
もう少し待てば、葉は大きくなり収穫量は増えるのですが、
爽やかで上品なお茶を求めて、少し贅沢なタイミングで茶を摘みます。

樹齢20年を超えた老木。
採れる葉の量はほんの少しです。
早速製茶が始まります。
文房も今日1日は製茶工場です。
理由はあります。茶の香りが満ちた文房。
とても贅沢な空間です。
まずは蒸します。

強火でおよそ1分。
むら無く火が通るようにかき混ぜながら。
暖めておいた焙爐(ほいろう)に、すばやく蒸した茶葉を移します。

※焙爐(ほいろう)とは、茶を揉みながら乾燥させるための道具。
山居では、ステンレスのお盆に、手漉きの厚めの和紙を敷いたものを、
コンロの上に載せ、小さな弱火で加熱します。

一斉に揉む。
水分を飛ばしながら、茶葉をちぎらない様に気をつけ、
しっかりと揉みます。茶葉の細胞のひとつひとつをつぶす様に・・・

最初は茶殻のようにしっとりとした状態。

徐々に乾きはじめ、揉み方にもひと工夫。
両手で揉んだり、押し付けたり、ふるい落としたり。
茶葉は徐々に粘り、団子のように丸まります。
ほぐしながら、また揉み続けます。

もう一息で完成です。
茶摘⇒蒸し⇒揉み
ここまでおよそ1時間半。

完成。
ぱらぱらと音を立てて落ち、細く巻かれた葉は指で折れる状態。
重さでいえば生葉のおよそ20%くらい。
見た目でいえば「こんな少しに!」くらいになります。

早速試飲。
試飲といっても、2回淹れれば今年の手摘みの茶は終わり。
贅沢な、お茶です。

まったく濁りのない澄んだ水色。
淡い色ながら、新茶の香りは濃厚です。
一煎目はおよそ60℃の湯で。
新茶特有の、若草のような香り。
焙爐(ほいろう)で、程よく焦げたことによる火香も加わり、
香ばしさも少し感じます。
きりっとした渋みの中に、爽やかな甘みが。
今年の煎茶は、大成功です。
二煎目は70℃くらいで。
しっかりとした味わいに。
三煎目は90度のお湯で。
なんと、香りも味も絶えることはありません。
この上ない至福の時間。
臥遊の仲間が集い、語り合い、茶を揉み・・・・皆で頂く。
庭では、目白や鶯の声。
時折吹く風に、桜の花びらは舞い散り、手水鉢にも振り落ちる。
茶の香りは、普段気が付かない自然の美しさへと導いてくれるのです。
今年の茶摘は、花見茶摘となりました。

茶殻を見れば茶が判る。
葉の形がそのまま残っているのは、手摘みの証。
小さな葉の姿から、かなり早めの贅沢な茶葉ということが判ります。
文人たちは、ひたすらに茶を愛します。
画を描く時、詩を詠む時、文章を推敲している時、鳥と向かい合う時、
花を愛でる時、月と語り合う時・・・・・
そして、良き友と語らう時。
山居暮らしで味わう、幸せな1日でした。
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