・柚子と枯蓮と蘇東坡・
庭の柚子の実は、日の当るところがずいぶん黄色くなりました。
葉陰の柚子はちょうど色づき始めました。
それに対して、池の蓮は、枯れて哀れな様になり、なお風雨に打たれ、ぼろぼろです。
とても寂しい季節に感じますが、中にはそうは思わない人がいるのです。
私が愛して止まない蘇東坡です。
彼の詩を紹介します。
蓮盡已無撃雨蓋 蓮はすでに尽きて無く 雨は伏した枯葉を激しく撃つ
菊残猶有傲霜枝 菊は残って霜の枝として遊び 猶有り。
一年好景君須記 とても寂しい季節のように思うだろうけど、私は一年で最も好む景色なので、君はよく覚えておくべきである。
最是橙黄橘緑時 橙が黄色くなり、橘が緑鮮やかで、最も美しい時であることを。
このような意味だと思います。
蘇東坡にすれば、けっしてこの季節だけが美しいとは思っていないはず。
しかし、この晩秋の寂しげな様を嘆く友人に、こう悟ったのではないのでしょうか。
彼にすれば、毎日のさまざまな出来事や自然の様子を、すべて詩に謳い上げることくらい、た易いことだと思います。
貧しくても、辛くても、汚れの無い透明な空気を詠うことのできる人ですから。
この詩を詠んで、画を描いてみました。
足元には枯蓮と、葉が赤く霜に焼けた菊。
見上げると、手前の碧い葉を付けた橙。その奥に淡緑の葉影に橘を描いてみました。
確かに冬の柑橘類の色は眩しいくらい鮮やかです。
※この画の描いた暖簾のようなものは、「帳」と呼ばれ、煎茶席の水屋の入り口に掛けるものです。
絹本の塩瀬の生地に少しだけ滲み止めをして頂き、描きました。
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