・松と月・

晩秋の夜空は澄み渡っている。

庭の石に腰かけて煌々と輝く白玉の月を眺める。

やがてピンスポットライトが自分に向かっているかのように

月以外の全ては闇の中に消え、月明かりに吸い込まれて、物想いにふける。

 
 床前見月光  寝床から月明かりを見ると

 疑是地上霜  まるで霜と見間違うほど地上は明るく照らされている

 拳頭望名月  頭を上げて名月を望み

 低頭思故郷  頭をたれて故郷のことを思い浮べる


李白は何度となく、月を眺め故郷を想ったであろう。

時には、月と自分の影を相手に杯を交わすこともあった。

中国では昔から世の中の全てが陰と陽でできているという。

月と太陽。陰と陽。

女と男。これもまた陰と陽。

しかし男の中にも、月と太陽に分けることができそうである。

月に心動かされ、月に恋をする。

月の仙女、嫦娥を愛し続けたゴゲイのように。

今宵も満月に惑わされ、夜が更ける。



気が付けば庭の松の枝先に月が架かっていた。

♪Comes as sweet and clear as moon light through the pine♪

先ほど亡くなったレイ・チャールズのジョージア・オン・マイ・マインドの一節。

国は違っていても、月は遠く離れた故郷を思い浮かばせ、人をセンチメンタルな気持ちにさせる。

親愛なるレイを想い、口ずさむ。

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