・夏の夜の月・
日が暮れるのが待ち遠しい。
しかし山居の辺りではすでに、
蜩(ひぐらし)の声と共に涼やかな空気が森からやってくる。
日が暮れると文房の明かりに誘われ、多くの虫がやってくる。
今年は蛾がやたらに多い。昨日はかぶと虫の雌がやってきた。
夜も更け、月灯りが池に映る。
文房の明かりにぼんやりと浮き上がった蓮の葉の向こうに月が昇ってきた。
一蓮托生 無責任な危うい語である。
月を眺め、6年前を思い出し、月は歪む。
明日を思い、あえて危うい一蓮に両足を移そうと決める。
静夜思 李白
牀前看月光 牀前(しょうぜん)月光を看(み)る
疑是地上霜 疑うらくは是地上の霜
挙頭望山月 頭をあげて山月を望み
低頭思故郷 頭を垂れて故郷を思う
故郷から遠く離れた地で、李白が見た月明かりは、
まるで霜が降りたように白く輝き、やがて月を眺めているうちに、
色々な想いが回り、故郷を思い深い悲しみに頭を垂れた。
昼の暑さに疲れた体ゆえ、多くの余計な想いが回る。
もしや月の仙女、嫦娥に操られているのか・・・
池に水を引いている小川も日照り続きで干上がってしまい、
池に水が注がれる音もない。
なおさら池面が滑らかで月が眩しい。
深夜、友よりメイルが届いた。
「京都の東山の松越しの月が美しすぎて眠れない」と。
親友である。
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