四季の草花

「春民暁に至る」

春眠不覚暁
処処聞啼鳥
夜来風雨声
花落知多少

春のねむりは心地よく、夜の明けるのもわからぬまま寝過ごしてしまった。
ふと気がつくと、あちらこちらで鳥のさえずりが聞こえる。
さては夜も明けたらしい。それにつけても、昨夜は雨風の音が激しかった。
春の嵐に、庭の花々はどれほど散ったことだろう。

唐代の詩人、孟浩然の五言絶句 「春暁」です。

しかし、この詩に共感できない暁もあります。



桜も終わり、まもなく五月という頃。

文房で過ごす夜来の読書。暁に至るまで。
傍らにある茶で暖をとる。



処処啼鳥の声を聞き、夜が明けてきたことに気が付く。



眼下には、朝靄に霞む暮らしの灯り。



そろそろ眠らなければ・・・・
そう思いながら、庭を徘徊する。
いつものように。
薄暗い森の中では、藤の花がかすかな光を一手に集めて深い色彩を放ち、
疲れた私の眼に心地よく写る。



頭上から下りてくる濃厚な香り。
受け咲きの大山蓮華が、花開いていることに気付く。

ゴツン!
背後で、突然大きな音。
ガサガサガサ。
陶芸小屋の窓の下。
薄暗い草むらが揺れる。



慌てもののムクドリが薄暗い中を飛び回り、ガラス窓に・・・・
そっと拾い上げた私の手の中で、ゆっくりと眼を閉じた。



憂鬱な暁。空は白み始め、朝を迎える。

どうしたことか、今朝は窓下に開く黄花の牡丹の華やかさが疎ましく思える。

手には、いまだにムクドリの温もりが・・・・・しばらく眠れそうにない。

山居暮し。

孟浩然の「春暁」よりおよそ1,300年。
暁、啼鳥、花。何一つ変わらない世界の中で、
人の暮しだけが、自然の鼓動と同調できずにいる。

春眠暁を覚えず。
そうありたい。

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