四季の草花 臥遊
春
「山藤」
5月になると山居の周辺の雑木林では、いたるところ一斉に山藤が花開きます。
「藤の花は棚に咲くもの」
間違いです。
木に絡まって、まるで紫色の瀧のように、
天空から若葉色の懸崖を流れ落ちるものなのです。
雑木林の柔らかな新緑と、藤色のコントラストが美しい、
自然の大きなオブジェです。
もう少し近づいてみましょう。

山居の敷地に流れ落ちてくる花です。
遠くから眺めるも良し。
近づいて見るも良し。
そして「えかき」特有の観察が始まります。

花は房の付け根から咲き始めます。
豆の花のようです。どうりで、実は鞘に入った豆です。
花びらよりも、蕾のほうが色が濃いです。
花の真ん中に少しだけ黄色が見えます。

昨年伸びた木質部のところから芽が吹き、
ひとつの芽の先のほうには葉が、
その下に花房が伸びて咲いているのが分かります。
花が開き始めるのと同じタイミングで、葉茎が伸びます。
つまり、咲き始めの葉茎は小さく赤みを帯びた若草色です。
まだ葉は開かず、垂れたようになっています。
そして花が房先まで開く頃には、葉はしっかりと伸び、大きく開きます。
藤の花と葉の関係。
「えかき」としては、見落としてはいけないポイントです。

藤瀧の中へ進入です。
くぬぎの大木に絡みながら天頂部まで上り、
そして蔓先を垂らして花を開きます。
弱々しい蔓も、数十年の間に太くなり、縦横無尽に育っています。
まるで、完成された藤の画の上を、太い筆を気ままに走らせたように。
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