・石榴花・

秋の項で石榴の実をご紹介しましたが、夏は花です。
こんな話があります。
紀元前2世紀、中国の前漢時代の話です。

ある役人が西域へ使節として遣わされ、
安石国で出会った石榴の花をたいそう気にいりました。
しかし日照りの日が続き、やがて石榴の木は枯れそうになりました。
役人はかわいそうに思い、毎日水をあげ続けていると、
やがて石榴の木は元の様に綺麗な花を咲かすまでになりました。

役人の帰国の前夜、部屋へ若い女が現れ、
「明日の帰国に私も一緒につれて帰ってくれませんか。」と頼みました。
役人は外国への逃亡を請いに来たのだと思い、厳しく追い返しました。

出発の朝、安石国は豪華なはなむけの品々を用意していましたが、
役人は何も要らない代わりに、石榴の木を一本持ち帰りたいと懇願し、
受け入れられ、持ち帰る事となりました。

しかし帰りの途中に、匈奴の攻撃を受け、
混乱にまぎれてせっかく持ち帰った石榴の木を失ってしまいました。
苦難の末、やっと長安の都へ辿り着きましたが、
失った石榴を思うと役人は心を痛め続けていました。

彼が都の城門に入ろうとした時、若い娘が息を切らし、
憔悴しきった様子で後を追ってきました。
良く見ると、安石国で会ったあの時の女です。

彼女はこう言いました。
「命を救っていただいたご恩にお報いしたくて、後を追ってまいりました。」
こう叫ぶなり、ばったりと倒れてしまいました。
ところが不思議なことに、
女の倒れた後からあの見事な石榴の木が見る見る生え伸びて、
再び美しい花を咲かせました。

石榴の鮮やかな朱色の花は、
西域のエキゾチックなニュアンスをもった花なのです。

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